
2026年10月後半、世界の包装業界では注目すべき動きが相次ぎました。再生紙などの原材料価格と製造コストがメーカーの収益を圧迫する一方、主要な国際航路では海上コンテナ運賃が再び上昇する兆しが見られました。
同時期、欧州連合(EU)は拡大生産者責任(EPR)に関する一部義務の見直しを進め、PACK EXPO International 2026では紙製包装、自動化、人工知能(AI)の新技術が注目を集めました。
SquareBagは10月19日から11月1日までの主な動向を整理し、ベトナムの紙袋・紙箱・包装メーカーへの影響を考察します。
1. アジア~欧州・米国向け海上コンテナ運賃が再び上昇
調整が続いていた国際海上運賃は、10月後半に一部主要航路で回復の動きを見せました。Freightos Baltic Index(FBX)の40フィートコンテナ換算(FEU)の参考値は次のとおりです。
| 航路 | 2026年10月20日更新 | 2026年10月28日更新 |
|---|---|---|
| アジア~北欧 | 3,442米ドル | 3,551米ドル |
| アジア~地中海 | 3,927米ドル | 4,252米ドル |
| アジア~米国西海岸 | 8,126米ドル | 8,368米ドル |
| アジア~米国東海岸 | 9,700米ドル | 10,565米ドル |
10月28日のFreightos更新による週間上昇率は、順に3%、8%、3%、9%でした。船会社の輸送能力調整、アジアの一部港湾の混雑、天候による運航への影響が背景にあります。
Freightosが引用したAlphalinerの推計では、アジア~欧州間のコンテナ輸送能力の約3分の2が紅海・スエズ運河経由へ戻っています。航路の短縮は輸送期間の削減につながる可能性がありますが、地域の安全保障情勢は依然として不確実です。
ベトナム包装業界への影響
- 紙袋・紙箱の輸出企業は、FOB・CIF・DDP条件の見積もり時に運賃の動向を確認する必要があります。
- 納品までの期間が長い契約では、輸送追加料金に関する条項の見直しが必要になる場合があります。
- 調達部門は、輸入原材料の輸送期間と遅延の可能性を更新して把握することが重要です。
これらは国際航路の参考指標であり、ベトナム発の個別貨物に対する見積価格ではありません。10月後半の上昇だけで長期的な運賃上昇局面の始まりを判断することもできません。
2. 再生紙価格と製造コストの圧力が続く
Sonocoが10月21日に発表した2026年第3四半期決算と、その後の決算説明会は、紙製包装業界のコスト上昇を示しています。経営陣の説明によると、古段ボール(OCC)のコストは前年同期比で約90%上昇し、非塗工再生板紙(URB)の製造コストは1トン当たり60米ドル超増加しました。
決算発表では、産業用紙包装部門の売上高は前年同期比5.2%増、消費者向け包装部門は2.9%減でした。これらはSonoco固有の事業構成とコスト状況を示す数値であり、世界の紙価格全体の上昇率ではありません。
Smurfit Westrockは10月28日に第3四半期決算を発表し、売上高は約81.6億米ドルでした。同社は、輸送費・エネルギー費などのコスト上昇が想定を超えたとし、価格改定と生産性改善を進めています。
ベトナム企業への影響
主要市場での古紙コストの変動は、産業用紙や再生板紙などの投入価格に間接的に影響する可能性があります。紙袋・紙箱メーカーは、実際の購入価格、材料ロス率、紙の利用効率の3点を重点的に管理する必要があります。
投入コストの予測が難しいときこそ、用紙の取り都合、材料使用基準、加工方法の最適化が競争力を支えます。
3. EU、一部包装生産者のEPR義務簡素化を提案
2026年10月21日、EU理事会は包装・包装廃棄物規則(PPWR)の一部行政義務を簡素化する提案について交渉方針を採択しました。
この提案では、EU域内に設立された生産者が他の加盟国の市場に供給する包装の量が暦年で1トン未満の場合、その国での認定代理人の選任義務を免除できるとしています。
小規模企業の事務負担軽減を目指すものですが、最終的な法令ではありません。EPR責任全体の免除や、EUへ輸出するベトナム企業への自動的な免除を意味するものでもありません。PPWRは2026年8月12日から段階的に適用され、包装廃棄物の削減、リサイクル性向上、循環型経済の推進を目指しています。
ベトナムの紙製包装業界にとっての機会
EU顧客へ供給する企業は、次の点を確認する必要があります。
- 素材と包装構造の実際のリサイクル可能性。
- 原材料の由来、材料構成、技術資料。
- 不要な材料使用を抑える設計。
- 顧客固有の要件と仕向地市場の要件への適合。
紙袋・紙箱では、省資源設計、複雑な複合構造の簡素化、適切なコーティングの選択が新製品開発につながる可能性があります。
4. PACK EXPO 2026:紙製包装、ロボット、AIに注目
PMMIによると、PACK EXPO International 2026は10月18~21日に米国シカゴで開催され、2,700社超が出展し、43,000人超が来場しました。展示では、適切な用途でのプラスチック代替、材料使用量の削減、生産自動化が大きなテーマとなりました。
一部のプラスチック包装を紙で代替
Graphic Packaging Internationalは、従来の一部容器を置き換える板紙製容器Boardioと、缶やボトルをまとめる板紙製キャリアEnviroClipを紹介しました。展示された用途では、Boardioは置き換え対象の容器に比べてプラスチック使用量を約90%削減できるとされています。
紙製EC包装の自動化
Rennco 301 Paper E-Commerceシステムは、一部の包装用途でプラスチックフィルムの代わりにヒートシール可能な紙を使用します。製品に合わせた袋サイズの調整、配送ラベル印刷、倉庫管理システムとの連携に対応します。資材削減と梱包作業の自動化が求められるEC分野で注目される方向です。
AIとロボットによるライン運用支援
CAMA Groupは、一体型カートニングシステムとAIによる温度・振動の監視技術を紹介しました。Manevaの画像検査プラットフォームは、単なる合否判定にとどまらず、不良の原因の分析を重視しています。個別工程の自動化から、データに基づく生産ライン管理への移行を示す事例です。
SquareBagの視点
印刷・紙製包装加工企業は、見積管理、材料使用基準、生産計画から品質管理へと段階的にデジタル化を進めることができます。最初から全面的な自動化設備に投資する必要はありません。業務データと工程の標準化が、AIを大規模に活用するための基礎になります。
5. 包装需要の回復は地域・分野ごとに異なる
10月後半の決算情報は、包装需要が一様には回復していないことを示しています。Sonocoでは産業用包装の売上高が伸びる一方、消費者向け包装は減少しました。ただし、海外の紙製缶事業では数量が前年同期比で2桁増となりました。
Smurfit Westrockは、北米の加工事業の改善を報告する一方、コスト上昇と地域による成長のばらつきに直面しています。International Paperも10月28日の発表で、燃料・エネルギー・古紙コストの課題に触れながら事業再編を進めています。
厳格なコスト管理が求められる一方、新しい需要に対応する分野には成長機会があります。ベトナム企業にとって、ファッション向け紙袋、買い物袋、ギフトボックス、EC用箱、段ボール包装には引き続き可能性がありますが、品質、コスト効率、納期、柔軟な生産対応が競争力を左右します。
6. 2026年11月に注視すべき3つの課題
第一に、紙価格と原材料コスト。 クラフト紙、デュプレックス板紙、アイボリーボード、段ボール、古紙を継続的に確認し、主要市場のコスト圧力がアジアの供給に及ぼす影響を見極める必要があります。
第二に、国際運賃の変動。 運賃改定、輸送能力、紅海航路の安全保障情勢は、納品計画と輸出費用に影響する可能性があります。
第三に、環境規制と技術投資。 PPWR・EPRの動向、紙素材、デジタル印刷、AI品質検査、自動化が包装製造の方向性を形づくります。
7. 展望:コスト最適化と持続可能性を同時に進める
10月19日~11月1日の動向は、包装業界がコスト上昇、貿易変動、環境要件、技術の急速な変化に同時に対応していることを示しています。
ベトナムの紙製包装メーカーにとって、適応力とは販売価格の調整だけではなく、製品設計、材料選択、生産効率の向上を意味します。
SquareBagは、製品品質、材料の有効利用、製造技術、環境への責任の組み合わせが、持続的な競争優位の基盤になると考えています。業務管理能力と顧客の需要に合う包装ソリューションへ主体的に投資する企業ほど、成長機会を捉えやすくなるでしょう。
本記事はSquareBagが国際的な公開情報をもとに編集・分析したものです。ベトナムへの影響に関する見解は一般的な市場参考情報であり、価格予測や商業見積もりではありません。
参考資料
- Freightos — October 20, 2026 update (published October 21)
- Freightos / AJOT — October 28, 2026 update
- Sonoco — Third Quarter 2026 Results
- Smurfit Westrock — Third Quarter 2026 Results
- Council of the EU — EPR negotiating position, October 21, 2026
- PMMI — PACK EXPO International 2026 recap
- PKN Packaging News — Paper, robots and smart closures
- International Paper — Third Quarter 2026 Results
- Packaging Dive — Sonoco OCC and URB costs, earnings-call reporting
